ザリラクス(THE RERACS)の2022年春夏メンズコレクションが発表された。
重力が織りなすかたち
地球上に存在するものは、あまねく下降する力に支配されている──重力、すなわち「グラビティ(GRAVITY)」とは、今季のザリラクスのテーマである。重力に抗うのではない。言うまでもなく、人も衣服も、重力の作用の下にあるのだから。したがってここではむしろ重力に身を委ね、衣服それ自体の重みと身体のフォルムの協奏が織りなすフォルムを生みだしてゆく。
すっと垂直に落ちるフォルム
重力に逆らわず、その力に沿うようにしてかたちを織りなす──たとえばトレンチコートは、生地の分量をふんだんにとり、肩から重力に従って垂直にラインを描く。ハリのあるシンセティックレザーを用いたライダースジャケットやスリーブにボリュームをもたせたシャツは、ドロップショルダーで仕上げたスリーブが途中で屈折することなくすっと直線上に落ちる。あるいはテーラードジャケットでは、重心を下方に設定することで、エレガントな構築性のなかに抜け感をもたらした。
ラインを引き立てるミニマムな表情
いわば重力が素材と、そして地面に屹立する身体とともに織りなす垂直なラインを引き立てるべく、ウェアの表情は極めてミニマルだ。身頃にはシェイプを施さず、ストレートなラインを強調。トレンチコートはミリタリーの出自を消し去るかのように、エポーレットなどのディテールを廃して。また、コートをはじめ、ブルゾンやシャツに至るまで、比翼仕立てとすることでボタンを隠し、フロントの視覚的なアクセントを徹底して抑えている。
自然と人工と、それらを織り交ぜつつ
素材は、最高級の天然繊維、機能性を徹底的に高めた化学繊維、そして天然繊維の欠点を補うようにしてた化学繊維を組み合わせるハイブリッドという3つの軸で展開されている。たとえばシャツ。天然繊維の極では、デイビッドジョンアンダーソン(DAVID JOHN ANDERSON)による最高級のコットン素材を採用し、そのさらりと心地よい生地感を存分に引き立てる。一方で化学繊維の極では、コットンのような質感をもつポリエステル素材により、通気性撥水性やイージーケアを叶えた。
ブランドの定番であるショート丈のモッズコートも、新素材でアップデートした。新たに用いられたボンディング素材は、極めて薄いポリエステル素材2枚を貼り合わせ、生地の反発性を活かすことでハリのあるシルエットを実現。軽やかでありつつも、立体感のあるフードやすっと下方へと落ちるシルエットなど、構築的なフォルムを引き立てている。
自然を彷彿とさせる落ち着いた色遣い
コレクションを特徴付けるカラーは、土や砂、樹木の枝、葉など、いわば自然から着想を得つつもミニマムだ。ブラックやグレー、エクリュに加えて、決して力むことのないトープカラーが大きな軸をなしている。そこに、デニム素材のインディゴやウォッシュカラーが、ある種の清涼感を与える。デニム素材とは言っても、そこにワークテイストの無骨さはない。セルロース繊維を使用したオリジナルのデニムは、シワになりにくく、上品な光沢感と柔らかなドレープ感が特徴。パンツではタックを入れてセンタープリーツを施しスラックスのような佇まいに、シャツではドレスシャツの仕立てで上品にまとめた。